虹暈(こううん)・・・太陽の周りに虹のような光の輪が現れる現象。ハロとも呼ばれ、大気光象の一種。「ひがさ」とも読む。らしい。
引き続きモンゴル族内の争いが続く。特に、テムジン率いるキャト家と、タルグダイとギルテの二頭体制のタイチウト家が何度もぶつかり合う。
ジャムカ率いるジャンダラン家は、テムジン軍を味方するが今のところ存在感は薄い。ジャムカがテムジンのようなカリスマ的な存在で、いつかぶつかる日が来ると思うのだが。
三巻では、キャト対タイチウト(テムジン対タルグダイ・ギルテ)の3度の戦があった。
- 彗星のごとく現れた玄翁軍
テムジン、突然現れた玄翁軍に負ける。
戦略と能力に長けるテムジン軍対、数で勝るタイチウトといういつもの構図だが、戦略で勝るテムジン軍が優勢と思われたそのとき、ギルテが雇った外部の戦いのプロ集団「玄翁」軍に、テムジンたちはあっという間に負ける。
テムジンもタイチウトも数千の騎馬のぶつかり合いなのだが、玄翁軍はその中をたった50騎で彗星のごとく現れて、数百騎を貫いて走り去っていく。テムジン軍はそこから体制が崩れ敗走することになる。外から戦いを見ていたジャムカが、「あれは魔人か」と言ってたのが印象的。そして、やはり玄翁を羊100頭で雇ったギルテはこずるい小心者だった。 - またしても玄翁軍
ほどなくして二戦目。「また奴らが来たらどうしよう」的なそわそわ感がありつつの再戦。またしてもテムジン優勢で、タイチウト二頭体制のうちの1人であるタルグダイの右腕を切り落とす。と、思ったら、また玄翁軍登場。
今回テムジンは直接対峙し、胴体を正面から斬られる。幸いにして武具が真っ二つになっただけで、体は無事だった。なんとなく、玄翁はテムジンを一目置いており、ここで殺すべきではないと手加減したように思える。刹那で手加減するくらい戦闘能力に差がある。
今回玄翁を雇ったのはタルグダイだったようで、ギルテもタルグダイも自力ではテムジンに勝てないことを自覚しているところが面白い。 - テムジン対ギルテ
前の二戦とは違ってぬるっと領土に入ってきた数百ギルテ軍を迎えたテムジンは、あっけなくこれをねじ伏せる。今回は玄翁登場はなく、ギルテを追い詰めて殺す。実際には、ギルテが追い詰められて「自分の終わりは自分で決めさせてくれ」と言い、その場で自害。
ギルテが(テムジンと比べて)自分の弱さを自覚した描写はぐっときた。
とにかく、彗星のごとく現れたプロの戦い集団、玄翁軍にもってかれた回だった。
実は初戦の敗走後に、テムジンの右腕であるジェルメは玄翁に会っている。ジェルメは、一巻でテムジンのカリスマ性やホエルンの人間性に惹かれてキャト家に仲間入りした流浪の戦死だが、実は玄翁とは師弟関係だった過去があった。ということもあり、ジェルメは師匠を訪ねて、「なぜあんなこずるい奴らを手伝うのか」と問う。玄翁は、「手伝ってない、金をもらって雇われただけ」との一貫した主張。そして二戦目もタルグダイに雇われてテムジン軍を貫いたわけだが、殺そうと思えば殺せたテムジンを生かしたことは偶然ではなさそう。
あと、テムジンとボルテの間に第一子誕生とか、テムジンのことを息子のようにかわいがってくれていたチャラカ死亡とか、いろいろあったが、とにかく玄翁の印象が強すぎる第三巻だった。