前から薄々わかっていた。高校野球が、甲子園が、特別おもしろいわけじゃない。あれはお金儲けしたい大人たちが作り出したものだ。
甲子園大会となると47000人を収容できる甲子園球場で一回戦から国営放送でテレビ中継、一流ミュージシャンのヒットソングがテーマ曲となり開会前から大盛り上がり、甲子園用に選手のバックグラウンドが事細かに掲載された本が全国の書店に並び、試合当日には学校をあげて吹奏楽部や応援する生徒・父兄を乗せたバスが出動し、試合後の夜には勝つと負けるとに関わらずテレビ朝日の熱闘甲子園でインサイドストーリーが語られ、号泣しながら甲子園球場の砂を集める選手と試合にすら出れなかったスタンド選手がこれまた号泣しながら太鼓をたたく姿を垂れ流す。
地方大会における地方メディアの取り上げ方も同様で、やはり野球だけはその注目度が違うように思える。僕は、野球が大好きで、高校野球には特別思い入れがあるので、決してこれを揶揄したいわけじゃない。
だけど、同じ高校生、バレーもバスケもサッカーも、その他のスポーツにだって同じようにドラマがある。大人がお金をかけて感動ストーリーを言語化・映像化しようと思えば、いくらでもできる。高校野球が特別に人の感情を動かす要素を備えているわけじゃない。
パリオリンピック。ちらっと見た柔道やスケートボードにいちいち感動して泣いてしまう。バレーボールなんかは超おもしろい。
スポーツ、全部尊い。頑張る人、全員尊い。
僕は過去に、プロスポーツ選手になる日を夢見ていた時期がある。そのころは、自分のプレイが人を感動させるものだと思っていた。だけど、この年齢になって、感動させられる側も悪くないなと思っている。頑張る人を見て、感情が動く体験をする。気持ちがすーっとスッキリするし、自分も負けてられないなと勇気をもらう。こんなありがたいことはほかにないなと。
スポーツってすべて等しく尊い。ルールがあるから、一瞬で言語を超えたコミュニケーションが成立する。そこで磨き上げた技を披露しあう。オリンピックに世界の美しさを覚える。これやっぱ老化かな?