大谷翔平選手、ついにドジャースへ移籍。10年総額 1015億円契約。もはや、すごさがわからない。いや、確実に前人未到の域に達していることは容易に理解できるが、見たことも聞いたこともない数字に、ただただ想像力が追い付かない。
そして、いろいろなたとえが飛び交っている。日給は約2781万円、時給は約116万円、宝くじを100回当ててもかなわない、4時間でサラリーマンの平均年収等。
さておき、僕はシンプルにMLB史上最高年俸選手になったことがまずうれしい。日本の野球は長らく舐められてきた。野茂、イチロー、松井と次から次への日本一のスタープレイヤーを送り込んでは、もちろん結果を出してきてはいるのだがいずれの選手も賛否両論があったように思う。めーちゃくちゃ結果を出してやっと評価される、それを維持できなければ即叩かれる。いわばそういう向かい風だったに違いない。
そういう逆境にあって大谷選手は否定の余地がない結果を残してきた。そして名実ともにメジャー最高選手になった。日本人が世界一の野球選手になった。日本野球界にとってこれほど嬉しいことがほかにあるだろうか。年俸がどうとか取りざたする前に、それを讃えてほしい。
なんたって今の僕らは暗い。テックも取り残された、車を中心とした工業製品も米中に負ける、為替でも競り負ける、国力の低下、少子高齢化、政治はボロボロ。そういう状況にあってたった一人で誰もが認める世界一に立った。
なんとなく、大谷選手の無邪気な野球スタイルが、ただ野球少年に夢を与えるだけではなく、大人たちにも響いてるんじゃないかと思う。前述のとおり、野茂・松井・イチローだって世界に名を轟かせてきたに違いないが、プロがプロたる振る舞いをしていたように感じる、いわば少し遠い存在だった。その点大谷選手は、プロのプロたる振る舞いを見ているというよりは、野球少年を見ているような感覚がある。それが現代の大人たちにも響いているんじゃないかと思う。
ただ夢中で好きなことをしていることが、世界中の子供から大人までを虜にしている。成績ばかりじゃなくって、そういう意味においてこれまでにない選手。二刀流といったラベリングももはや狭い檻のようにさえ感じる。言ってしまえば年俸という数字でしか大谷選手の良さを評価できないこの世界が負けているようにすら感じる。
それでも、覚悟しておかなければならない。彼も1人の人間であり、不振に苦しんで結果を出せず「給料泥棒」と非難されるかもしれない、ひょんなことからギャンブルや女性問題でスクープされるかもしれない、プライベートでの部下に対する横柄な態度が週刊誌にキャッチされるかもしれない。
勝手に神格化するのは自由だが、てめぇの期待に沿えなかったからと言って突然非難するのはナシだ。そうやって一人の人間を追い詰めるのが大好きな僕らは、「そうしない」と誓って心から応援することにしような。