『同志少女よ、敵を撃て』

舞台は独ソ戦、我々日本人目線では第二次世界大戦の一部って感じではあるものの当人らにとってはそれとは別らしい。だとしたらドイツ忙しすぎる。さておき。

主人公セラフィマ16歳女性、村の猟師、ナチスに村を焼かれ母を殺されるところから始まる。
狙撃手になるきっかけを与えるイリーナ教官。セラフィマの村に助けに入るが思い出の家財道具や写真を焼き払って泣きわめくセラフィマを突き放す。
最強兵士を育てる訓練校に入校。そこで女性兵士の卵たちに出逢う。のちの戦友たち。
親友になるシャルロッタ、カザフの天才アヤ、最年長28歳でママと慕われるヤーナ、ウクライナコサックの娘オリガ(のちにNKVD・督戦隊であると判明)
分校配属だったが、イリーナ教官の指導で本校の奴らをぶち抜いて最強の女性狙撃小隊として実践に放り込まれる。

初陣はスターリングラードでのウラヌス作戦。ドイツの第6軍隊に占領されたスターリングラードを、さらに南北から包囲して追い詰める。これが見事にはまって勝利するが、アヤを失う。
カザフの天才はその名に恥じない大活躍をしたが、教官の教え「一か所にとどまるな、自分の弾が最後だと思うな、賢いのは自分だけだと思うな」を忘れて、最後は戦車の砲弾に被弾。一瞬にして肉塊になった。

ヴォルガ川を利用して市街地に上陸。ここからはアパートの一室からの狙撃戦(星屑作戦)。
事前に陣取っていた別部隊の兵士たちと団結し増援もあって勝利を収めるが、新たに仲間になったユリアンを失う。また、かつて自分の村を焼き払って母を殺したドイツ兵・イェーガーに遭遇。超一流の狙撃手だと判明。復讐心を再認識する。

その後も各地で連戦を繰り返し、最強狙撃部隊と称されるようになった。セラフィマは80人以上を狙撃しソ連の記者にインタビューを受ける日々。ある日軍の施設で幼馴染のミハイルに遭遇し歓喜の瞬間かと思いきや、ミハイルは80人殺しのセラフィマに引いてるし、セラフィマは女性蔑視の戦争世界に辟易して、微妙なすれ違いの描写がある。

最期のレニングラードの戦い。ここでヤーナはドイツの子を助けにいって致命傷を食らい昏睡。
相手がイェーガーだったぽいとわかり怒り狂って後日単身敵地に乗り込む。
だがあえなくとらえられ拷問を受ける。これが実はすべてセラフィマのシナリオどおりで、無事イェーガーにたどり着き、この手で絶命させ無事復讐を果たす。
その敵地尖塔から外を見ると、幼馴染ミハイルがドイツ女性に乱暴している姿を見て、慈悲なきヘッドショット。

当初イリーナをも復讐対象としていたセラフィマだが、思い出の写真は実は焼かれていなかったことやソ連の焦土作戦の意味を知ったあと、家族のように余生を過ごす。
ヤーナは無事回復してシャルロッタとパン工場を営んで余生を過ごす。ここで終わり。

激動すぎて要約書くの大変すぎ。ここから考察。
まずもってナチス・ドイツの戦争ってのは、国家や軍隊の勝ち負けではなく、あるいは政治的・経済的・軍略的な事由もなく、ただひたすらに「ユダヤ人の絶滅」を目的としているので、殺すために殺してる感の異常さは他に例がないと思う。平然と国際社会にもどれてる今が不思議なくらい。
次に、我々人間はものごとを単純化して理解したいバイアスがかかるのでこうして過去を大局で語ってしまいがちだが、否そこで殺し合いをする兵士たちには、「一人一人の物語がある」ことを理解すれば、一度動き出した憎悪や復讐が、ウィルスのように幾何級数的な広がりになっていくことは頭で理解できる。1の殺人が5の憎しみを生む→5の憎しみが3の殺人を生む→3の殺人が9の憎しみを生む みたいな感じ。
だから、やっぱり最初に仕掛けたほうが悪いとしか言えない。国家の使命や大義だったとしても始まってから先は「一人一人の物語」に違いない。
それなのにどうして最初の攻撃をしてしまうのかといえば、やっぱり「物事を単純化して理解したい」からだろう。どっちが正義でどっちが悪なのか決めて楽になりたい。複雑なことを複雑なまま受け入れる苦しみから逃れたい。そういうことなんだと思う。

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