顧客の事業規模と要求の難易度は無関係

「小さな顧客向けだから難易度は低いだろう、大きな顧客向けだから難易度が高いだろう」
これは幻想だ。むしろ逆をたくさん経験した。

1つには、IT投資予算は事業規模全体の予算から相対的な値でしか妥当性を認識できないことにある。
たとえば、1000億円の事業をもつ大きな企業さんが10億円のIT投資をするのと、1億円の事業をもつ小さな企業さんが100万円のIT投資をするのは、ユーザ企業にとっては同程度の期待値であると考えておかなければならない。

無論、事実ベースでは実現できる内容に天と地ほどの差はあるが、売上の1%を使って投資するのだからそれ以上の投資対効果がないと納得できない。ベンダー側にとっては、100万円だったら「この程度」というラインを無意識に引くが、その安パイな感じはユーザ企業に伝わってない場合が多い。

もう1つは相場感がわからないこと。多くの人は、100万円で家が建たないことはわかるし、10万円では車が買えないことはわかる。500万円あれば高級車が購入できることもわかるし、1億あれば立派な豪邸がたてられることもわかる。

だけど、1000万円で構築できるシステムってどんなもの?
100万円でどんなソフトウェアが作れるの?
これがわからない。自分は業界にいるから幾ばくか想像はできたとしても、稀に(良くも悪くも)外れ値の価格設定を見る場合もあるので、そういう先入観が良くないことも知っている。
ゲームソフトなんかは業務系システムよりもプログラムの難易度は高いが、不特定多数の利用者で費用按分できるから単価は安くなるし、逆にオーダーメイドの業務システムは高い。ユーザー企業はそういうこともピンとこない。

事業規模の小さいお客様の「こんなはずじゃなかった」は、設計段階よりも、要件定義段階よりももっと前、そもそもの認知のゆがみによるところが大きい。

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