『夜と霧』

第二次世界大戦中にナチスの強制収容所に収監されたビクトール・フランクルさんが、その経験を語ったもの。ビクトールさんはもともと精神科医で、生きる希望を見失った精神疾患者に対して、人生の意味を諭すことで救いを与えてきた人。

そんな人が戦争に巻き込まれ、強制収容所に収監され、およそ同じ人間とは思えない扱いを受け、強制労働の日々。毎日一切れのパンかじゃがいもと具のないスープ、監督員による理不尽な暴力、劣悪な衛生環境、次々と仲間が死んでいく、自身も発疹チフスを罹患しながらも、決して生きる希望を失うことなく耐え続け、解放まで生き抜いた記録。

俺はここが好きだった。↓

わたしはトリックを弄した。突然、わたしは煌々と明かりがともり、暖房のきいた豪華な大ホールの演台に立っていた。わたしの前には坐り心地のいいシートにおさまって、熱心に耳を傾ける聴衆。そして、わたしは語るのだ。講演のテーマは、なんと、強制収容所の心理学。今わたしをこれほど苦しめうちひしいでいるすべては客観化され、学問と言う一段高いところから観察され、描写される・・・このトリックのおかげで、私はこの状況に、現在とその苦しみにどこか超然としていられ、それらをまるでもう過去のもののように見なすことができ、わたしをわたしの苦しみともども、わたし自身がおこなう興味深い心理学研究の対象とすることができたのだ。

ほかにも良いセンテンスはたくさんあったが、ここが一番勇気をくれる。しかも実践的でもある。

何度でも読み返したい一冊になった。

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