コンビニ人間

KindleUnlimitedで急にオススメされて読んでみた。吸い込まれるように数時間で読み終えた。

主人公の古倉さん、コンビニのアルバイター。大学卒業後も就職せずずーっと同じコンビニで働き続けて十数年の35歳前後(たぶん)。子供の頃、自分は人とは変わっているということを自覚して以来、周囲と距離を置くようになって就職活動もロクにせず、それでもコンビニバイトにはやりがいを見出してそのためだけに生きてきた女性。

白羽さん、同じコンビニアルバイターの男性。だが、勤務態度が悪く、「コンビニで働く奴らは底辺だ」と言って見下し、一方で自分はこれから起業するんだと豪語するわりに行動が伴っておらず、こちらも古倉さんと同年代。

どちらも、親や周囲の「普通であるべき」というプレッシャーに追い詰められている。彼らは鈍感で空気が読めないところがあって、どちらかといえば彼ら自身は自由に生きていたはずなのに、段々と「あなたはおかしい」という世間の圧力に屈して、互いの利害(人としての普通さ)を得るために同棲し始める。

これは、いわゆる境界知能という人々だろう。僕はIQテストをしたことがないので、自分が当事者なのかどうかはわからないが、僕の三十数年の短い人生において、古倉さんのような人を思い出そうと思えば2人くらい思い当たるし、白羽さんのような人も2人か3人程度は思い当たる。

おそらく多くの読者は、自分を普通側に置いたうえで、過去関係を築いてきた友人や知人を古倉さん・白羽さんに重ねて読み進める。(残酷だけど、)だからこの本が売れたのだと思う。自分と違う誰かを「普通とは違う」と定義することで、自分がメシウマになるに違いない。

くだらない。世界はなんてくだらないんだろうか。

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