引き算の勇気

スピーチやプレゼンで話す内容を絞り込むことに苦労している。
十分に絞り込んだと思っても、いざその場に立つとメインストーリーからサイドストーリーまで、自分が持つ情報をすべて届けねばという謎の使命感がふつふつと湧き上がってくる。

予定にない情報を詰め込めば時間も押すし、前後のストーリーとのつながりが切れてしまう場合もある。するとトータルのクオリティは落ちるわけで、聞き手の理解より自分の満足感を優先しているということになってしまう。残念だが認めざるを得ない。

あるいはこれは、事前に絞り込んだ内容に対する疑惑ともいえる。いざその場でふつふつと話したくなってしまうということは、事前の絞り込みの精度が低く、自分で納得できていないのかもしれない。

ウッドローウィルソン大統領(アメリカ第28代大統領)は、こんなことを言ってたらしい。『2時間の講演なら今すぐにでも始められるが、3分間のスピーチなら少なくとも準備に一晩はかかる』

足していくのは簡単だが、引いていくのは難しい。
長い文章で伝えるのは、いろんな商品を取り揃えておくことによって多くの人のニーズを満たそうとすることで、能無しでもできる作戦だ。しかし短い文章で多くの人の共感を得るのは、戦略的に洗練された1商品を準備することであって、考え抜かれたストーリー、洗練されたフレーズ、絶妙な間合いそれらすべての予定調和を崩さず最後まで維持することなんだと思う。

本当はいろんな商品を持ってるのに、1つしか店頭に並べちゃいけないってのはとても勇気のいることだ。短くまとめたいときこそ、準備に多くの時間が必要になる。納得。

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