沈まぬ太陽(五)-会長室篇・下-

始終利権の話。利権オブ利権。
海野・岩合・行天ら旧態の経営陣は、自分が悪いことをしているという自覚がとっくに無くなっている。罪の意識がないので、国見・恩地が正常化しようとすることに対して、心の底から自分たちが正しいと思い込んでいる。会社のため、従業員のため、乗客のために、悪いことは表に出さないほうが正義であると、信じている。

だから、正義と正義がぶつかってるんだ。
はたから見れば、国見・恩地の正義と旧態メンバーの悪が戦ってるように見えるが、当人らは我こそ正義でやってるので終わることがない。

こういうことって、日常生活で結構あると思う。
・上司の、部下に対する強すぎる説教。
・親の、子に対する執拗な介入。
・SNSでの誹謗中傷合戦。
こうしたものも、正義と悪ではなくて、異なる正義のぶつかり合いだから、折り合うことなく疲弊し続ける。

人のことなら一般解や綺麗ごとを並べることはできるが、我が事となれば自分だけが損することだけは何があっても受け入れることができない。どんなに支離滅裂でもそれが一番強い正義になる。だから、総論では賛成しても各論では反対で何一つ現状が変わらない。

最後に、行天らが泡を吹く描写をもっと入れてほしかったな。

でも、勝者はいないってことがよくわかる最後だった。
・国見は更迭される。(本当は自主辞任)
・恩地はナイロビに飛ばされる。
・行天は逮捕される。
・岩合は国航開発社長を馘首される。
異なる正義がぶつかりあって、全員敗者。

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