最終日に、ようやっと恩師(以前の上司の上司)にちゃんと挨拶をしてきた。
別部署に異動されてからは全く連絡しておらず、たまに会っても会釈する程度だった。
この方の部長時代の技術者意識調査シートに、「35歳までに中小企業診断士になる」と書いたのだった。
俺はこれを、「男の約束」だと心にとめていた。絶対にあきらめないと。
言葉は決して多くはないが、深い洞察力と広い心が魅力の部長だった。
合格を会社に報告した際には、いの一番に自分の席まで駆けつけてくれて、おめでとうと言ってくれたのだった。そうした律儀なところが男として惹かれる部分でもあった。
その後、食事でも行けたらと話していたが実現されず本日に至ってしまった。ちゃんとお誘いしなかった後ろめたさから、どうやって挨拶に行こうかとウジウジしていた俺。
意を決し挨拶にいくと「良かったじゃないか。お前にとっては良い決断だったんじゃないか」と言っていただいた。その一声で、すべて把握していることがわかった。誰からどう聞いたのか不明だが、今回の進退のことは細大含めてすべて把握しているようだった。
いつもそうだ。すべて把握している感じが最初の一言に現れる。そんな一言を俺も言えるようになりたい。
今度こそ帰省の折には食事にお誘いさせていただきますと、あらためて約束をしたのだった。