『峠』(下)

江戸・横浜で武器を買い込んで故郷にもどり、小千谷・長岡での西軍との戦争と死までを描く。

小千谷談判が熱かった。いよいよ継之助の考えが理解できない藩士たちと最後まで頑固に自分の世界観(つまり代右衛門が表現するところの“きわどい夢”)に固執していた継之助のコントラストが熱い。ギリギリまで奥羽会津同盟には参加しないことと、かといって武士として官軍に寝返ることもしないという他藩にない考えを、圧倒的な武力で実現しようとしていた。ダメだとわかっていても継之助の外交力・突破力でいけるんじゃないかと思ってしまう。彼には越後長岡藩は小さすぎたってのがよくわかる一幕だ。
小千谷談判で山県か黒田が河井と出会っていたら、越後長岡藩はどうなってたんだろーか。
新潟にでっかい港ができて、東アジアとの貿易の拠点になったのかなー。すごい夢がある。

刺さったセンテンス
・人はその長ずるところをもってすべての物事を解釈しきってしまってはいけない。必ずことを誤る。
・人間は朝の寝覚めが肝心なのだ。朝、気分がすっきりしているということが達者の証拠だ。
・いかに威武ある存在からおどされても心を屈せず、いかに貧乏しても志を変えぬがえらい男だ
・統治はすれども政治はせず(大殿様への揶揄)
・軍中敵味方の強弱を論じたり本営の作戦を批評したりすることは軍隊活動に百害あって一利もない。
・外交は武力の後ろ盾があってこそのものだ
・人間は、やはり自分が生きている環境から飛び上がれぬものだな。
・そもそも河井の相手に岩村のような小僧を出したのが間違いのもとだ(山形狂介)
・敵に対する優しさがなければならない
・きわどい夢をみていたのだよ(代右衛門)
・今からの行動はすべて「後世」という観客の前でふるまう行動でなければならない
・いじめぬかれた虫けらというものが、どのような性根をもち、どのような力を発揮するものかをとくとおもいしらしめてやらねばならない。
・戦さには、戦さ以上のものがあるのだ。
・軍略かには臆病さがなければならぬ。(西郷吉之助の伊地知に対する評価)
・陽明学というのは、その行者たる者は自分の生命を一個の道具として扱わなければならない。



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