体が一回りも二回りもデカい奴が前から歩いてきたら「本能的な恐怖」を感じる。
無論そういう素振りは見せないようにするが、自然と道を譲るとか、目を合わせないようにするとか、縮こまった小動物のような感覚になる。
これって、男だったら誰しも皆もってる感覚だと思う。
俺たちには、生物的な強さを瞬時に判断できるセンサーがある。
数万年前から植え付けられた生存本能といったところだろう。
自分の記憶では幼稚園くらいの頃からすでに「あいつは強そう」「負ける」といった感覚があった。いつもトランポリンを独占してるKくんが恐かった。
考えてみれば不思議なことだ。
実体験として「前から歩いてきた屈強な男」が「俺を殴り倒した」過去なんか一度もないのに、漠然とした恐怖か敗北感みたいなものがある。
この感覚は、女性が男を見て「この男なら大丈夫」「この男はダメだ」と見極めるセンサーとほぼ同じ仕様だと思う。ここまで高度に社会性が発達した現代においてもその本能が男女ともに消失していないのは、それが極めて精度の高い判断方法であることの裏付けだと思う。
こうした事実に、早く気づきたかった。もしそうなら学生時代にもっとガツガツ体を大きくしただろうし、バスケやバレーを選んで身長伸ばしのために数年間をぶっこむ判断ができたかもしれない。
学生時代は特に、ひょろがりのほうがいいと思ってた時期がある。そんなわけない。
男らしく強く生きるにしても、異性を惹きつけるにも、デカい奴が勝つに決まってる。
大人たちがよく言う「たくさん食べて大きくなれ」に、こんな深い意味があるとは知らなかったよ。