『人類と気候の10万年史 過去に何が起きたのか、これから何が起こるのか』

面白かった。福井の水月湖、一度行ってみたい。

水月湖が他にない年縞を形成できた理由。それはかなり要約すると、ひっそりと存在し続けたから。河川との接続がなく、山に守られた地形で、そういう環境だから水中の酸素が少なく、それによって生物もいない。だから、湖底に堆積物が誰にかき乱されることなく蓄積しつづける。年縞(木で言うところの年輪)が7万年分も蓄積された、奇跡の湖。

この奇跡の湖で実施された14C(放射性炭素)年代測定の結果が、ミランコビッチ理論(2.3万年ごとに氷期が来る説)と驚くほどシンクロしているらしい。このくだりは鳥肌モノだった。

ところがここ数千年だけは様子が違うらしいのだ。本当はそろそろ温度が下がりはじめる時期に来ているはずが、上昇し始めているらしい。ちなみにラジマン教授の理論においても同様で、温暖化は産業革命以前の数千年前から始まっており、農耕の発明がCO2とメタンの濃度を高め、地球が氷期に移行するのを先延ばししているとのこと。

こういうの調べてる人たちってすごい。自分の人生をかけて1つ新しい何かを見つけるかどうかってレベルの地道な研究。人類史を作ってるって感じ。どうしても環境活動家みたいな人の声ばかり大きくて、エビデンスまでは僕らに届かない。届いたところで興味を示す人は少ないし、逆に興味を引くために政治の道具にされて終わり。

一縷の望みは、もはや科学が勝てるところまで来てるんじゃないかってこと。温暖化は緩やかにしかし確実に忍び寄ってると思うけど、現代の科学はそれを上回るくらいのポテンシャルはあるような気がするし、逆に氷河期が来るんだとしても、ゆっくりと徐々に来てくれるなら世界の天才たちが、科学が、助けてくれるんじゃないかと思ってしまう。

あるいは、勝てずに絶滅するにしても、それを受け入れるくらいの哲学もあったりして。昔と違うのは、「神の仕業」みたいな荒唐無稽で目に見えないことにおびえる必要がなくなったこと、そういう人が減ったことが、めちゃくちゃ幸せなことに感じた。

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