『ライオンのおやつ』

海野雫 33歳、独身OL。ステージ4の末期がんで余命幾ばくもない。
度重なる抗がん剤治療もむなしく体も心もボロボロになり、終末医療に切り替えようとレモン島にあるホスピス「ライオンの家」へ向かう。
唯一の家族と言える育ての父にすら病気を告げず、人知れず死にゆくことを選択するのだった。

ホスピスでは、オーナーであるマドンナ、料理人の狩野姉妹、ワインを造るタヒチ、犬の六花、変態?アワトリス との出会いと人間模様が展開される。
表題にもあるとおり、「おやつ」が壮大なテーマになっている。

ホスピスの入居時に「人生最後のおやつは何を食べたいか?」のリクエストを伝え、これを狩野姉妹が忠実に再現する。毎週日曜日がおやつの時間であり、その日くじ引きで選ばれたリクエストが振舞われる。つまり、いつ自分の番がくるかわからないし、最後まで来ないかもしれない。それが人生であるという比喩だったりするんだろう。

雫は、おやつの時間に限らず、朝食で振舞われる御粥、六花との散歩、タヒチとのデートに自らの生を見出していくが、彼女にももちろんお迎えの時間がくる。彼女がリクエストしたミルクレープのくだりからは、涙なしには読めたものではなかった。

雫のように素直に、
マドンナのように強く、
タヒチのように明るく、
六花のように無邪気に、
雫の父のような愛をもって、俺も生きたい。

ところで、俺だったら最後のおやつ、なんだろな。
全然思いつかない。あれ、おかしいな。ぜんっぜんおもいつかん!
おやつに限らず、この物語の「食」への幸せ描写が、俺にはぐさぐさ刺さる。
俺も、大切な人とおいしい食事がしたい。


(今回実は一番の発見は、本をもらえることの嬉しさ。表紙やタイトルでその出会いにワクワクするし、内容を知ってまた違う味わいや意外な発見があり、読み終えて自分の血肉になる感じがする。加えて、これを準備してくれた人と気持ちが通じた気がする。俺も人に本をあげよう。)

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